本当に久しぶりにクラシック音楽のコンサートへ行きました。
ドイツで活躍している素晴らしいピアニスト・原田英代さんが
浜離宮朝日ホールでシューベルトの室内楽を演奏してくれるというので
うきうきとでかけ、幸いにも最前列席!!
最高の夜を楽しみました。

演目はもちろん全部シューベルトです。
1曲目が「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調D574」
といっても、ピンとこないのがにわかファンの宿命。
だけど、素晴らしさは聞けば一瞬にして脳裏に翻ってきます。
22歳の若いヴァイオリニスト、ミハイル・シモニアンという方が
これまたすごくチャーミングなのです。
ロシア人とアルメニア人の両親のもと、シベリアに生まれて
13歳でデビュー。以来世界的に活躍しています。
彼の演奏は本当にちゃめっけがあって、いきいきしていて、
人間版ティンカーベルみたいなイメージ。音が全部躍動しているのね。
原田さんはそんないたずらっ子を追いかけたり、捕まえたりして
スリリングな展開でした。

2曲目はうってかわって、大人な雰囲気です。
「アルベジョーネ・ソナタ イ短調D821」
ギターとチェロのあいのこのような「アルベジョーネ」という
楽器のために書かれた作品です。楽器そのものは早くに廃れてしまった
そうなんですけど(で、もろちん公演ではチェロが登場)
とにかくノスタルジックで、美しいメロディーがすばらしいのです。
チェリストはドイツ人のイェンス=ペーター・マインツさん。
1995年から9年間、ベルリン・ドイツ交響楽団の第一ソロ・チェリスト。
2004年よりベルリン芸術大学教授に就任されています。
彼と原田さんは本当に息が合っていて、心の流れのようなものが
目に見えるみたいに感じるのね。音楽をやる人たちは、
普通の人間関係では得られない、なにか特別な絆を、演奏中にだけ
紡ぐことができるのかも知れません。
羨ましいなぁ……。
ちなみにマインツさんのチェロは1696年製作のヴィンツェンツォ・ルジェーリ。
——といってもピンとこないけど、
最前列で見たから、この楽器のなにか特別な命をかいま見ることができました。
ちょっと生き物みたいなところがあるのね、楽器って。

3曲目は「ピアノ三重奏曲 第2番変ホ長調D929」
これはとにかく豪華ですよ。この個性溢れる3人が一瞬の隙もなく
バトルしてるんですから。いや、バトルと言うと乱暴になるから違うかな。
互いの呼吸を一緒に見つめているような、一瞬の出会いと別れの繰り返しというか。
楽器で饒舌に語ったり、互いの世界をともに解きほぐしているような。
スウェーデン民謡「太陽は沈み」からとられたとされるメロディーが
幾度も現れてくるのだけど、これがまた美しいのです。
CDを出すという噂を耳にしたので、このシリーズ、ぜひ欲しいなと思います。